君は誰よりも

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だがその直後、構築されていくアバターの向こう側で、一人の男子生徒がニコニコと微笑みながらこちらを見ている事に気が付くと、僕は反射的にエンバーディーを顔から外した。 別に見られていても構わないのだが、人気のない廊下で誰にも見られていないと思っていた分驚いたのだろう、まさか正面にいるとは思わなかったのかもしれない。 更に言えば目の前にいるこの男子が同じクラスの子供だった事も、この男子の性格も少しだけ関係しているかもしれない、僕は彼の事を少々厄介な子供と思っていたのだ。 「か、カナタくん?」 「ついにシンカくんもエンバーディー始めたんだね!」 彼はカナタという名前の者で、クラスの中では所謂「賑やかし要員」のような存在である、必ず賑わっている輪の近くにいて、中に入らずに外野からその様子を眺めている子供だ。 「いやあの…始めたっていうか…お母さんに押し付けられて…」 教師や親からは「普通の子」と認識されていて、僕達子供からは「空気のような子」と思われている、逆に考えれば何を考えているかなんてさっぱり分からないやつである。 故に信用なんてできる訳が無く、急に常識から逸脱した行動を取る可能性だってある、例えば自分が目立つ為に、僕がエンバーディーを手に入れた事を他人に言いふらして回ったりするかもしれない、それが原因で悪目立ちするかもしれない。 「とりあえず初期設定しただけだから…」 もしくは自慢する為だけに初心者の僕に執拗に張りついてくるかもしれない、彼は才能に乏しく何もない「欠点まみれ」の人間なのだ。 彼はそういう危険性を孕んでいると、この状況はあまりよろしくないものだと、僕が最も信頼する観察眼が警告を発していたのだ。 「…とにかく自分で何とかしてみるよ」 そう言うと僕はこの場を去ろうとした、エンバーディーをポケットに入れて、彼のいない何処かへと歩いて行こうとした。 次の瞬間、カナタが太陽のような笑みを浮かべ、その何もなさそうな口から意外な言葉を言い放つまでは。
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