あんたって本当は

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放課後、僕達四人はエンバーディーセンター前に辿り着くと、そこには風になびかれる少女が二人で待っており、カノンはニコニコと微笑みながら大きく手を振り、ミオは恥ずかしそうな顔で小さく手を上げた。 恋愛脳のキョウイチは二人の美少女っぷりに目が眩み、カナタとヒトシはまるで保護者のように一歩後ろから僕達を見守る。 僕は幼い頃から随分と変わってしまったミオに複雑な心境を抱き、ふとこれから行われるコンテストに一抹の不安を覚えた。 そのミオの姿を見て、本当に自分が彼女達と上手くやっていけるか分からなくなってしまったのだ。 まだ自分がやると決まったわけでもないのに、それなのに彼女と遊んでいた無垢な頃を思い出して、今の彼女と比較してしまった。 「…あれから遅かったじゃない」 「キョウイチとヒトシの家が遠いから…」 「そう…」 実は家の前で出くわしていた僕達が早くも気まずい雰囲気になると、冷や汗を流すキョウイチは「とにかく入ろうぜ!」と僕達を誘導する。 本当に彼はキャラのわりに繊細なやつだ、それを知っているカナタは「さあ行こう行こう」と僕の腕を引っ張り、ヒトシは何も言わずについていく。 「じゃあミオちゃん行こっか?」 「ちょ、ちょっと…」 顔に?マークがついていそうなカノンは、その場のノリでカナタと同じようにミオを引っ張って、彼女を暗い気持ちのまま無理矢理連れてきた。 僕とミオは引っ張られながらも気まずいまま目が合うと、言葉が詰まって何も言わずに同時に目を逸らしてしまった。 「それにしてもクラフトかー!楽しみだなぁ!四人でやってみたかったんだよなー!」 無類のクラフト好きであることを前々から匂わせていたカナタは実は誰よりも楽しみにしており、当然この男子の中では自分が選ばれると思っていた、キョウイチはともかくヒトシも女の子とは関わりが薄い。 カナタは男女問わず広く浅く関係を持っており、そういう立場はこういう微妙な時にこそ発揮するものである、とりあえず人数合わせであいつを入れておけとなりやすいのだ。 しかし彼はその「広く浅く」が時に残酷なものになるとは思いもしなかった、特に今の仲良しさんが多い状況で、ミオという男子が苦手な子のお願いを聞くというシチュエーションで。 直後、受付に近付くとカノンはおもむろに僕達を指差した、全ての決定権はまさかの彼女が持っていたのだ。
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