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ようやくクラフトによる部屋作りが始まり、僕達は担当スペースを男子と女子の半分に分けてから、それぞれ飾りを作って壁、床、天井に貼り付けていた。
操作の分からないキョウイチには同じく初心者である僕が教えることになり、そこから彼の女子からの嫌われっぷりがなんとなく伺えた。
日頃の行いというのは大事なもので、人物像というのは意識していない日常の中で作られていくものなのだ、典型的な男子である彼は女子には受け入れられにくいようである。
しかしそんな彼も女子の遊びであるクラフトに夢中になっているようで、僕の隣で何やらトゲトゲした物体の作成に勤しんでいた。
元々地道な作業が好きなのだろう、何かを本気でやって強くなるということは、地味な同じことの繰り返しでもあるのだから。
「シンカくんもうちょい下だよ下!僕達の身長考えて!僕達の部屋なんだよこれは!審査員はそういうところも見てるよ!もっとプロ意識高めて!」
「カナタちょっと…」
ちなみに僕は自分の家にあるような壁掛けの棚なんかを無難に作っているが、現在は窓から聞こえる横やりに悩まされているところである、正直に言えばカナタがうるさい。
選ばれなかった腹いせというか、意地でも部屋作りに参加したいというか、要はストレスに対して現実逃避をしているのである、迷惑であることを覚悟しながら。
「よっしゃー!できたぜ世紀末覇王ロボヒャクレツハガンケン!カノンちゃんこれ超かっこよくね!?真ん中に飾ってもいい!?」
おかげでキョウイチを制御する暇がまったくない、部屋作りなのにトゲトゲのロボットを作って一体何に使えるというのだろう、そもそも部屋を作る気があるのだろうか。
「かわいくないしおもしろくないからだめ」
「し、シンラツゥー!」
「カノンちゃんも何キモイの作ってるの!?」
「えへへ、今日の夢にでてきた子なの」
「かわいくないしおもしろくないよ!?」
「えーじゃあぺったんこしちゃうね」
「やめてグロいから!!」
しかしどうやら問題は彼らだけではなく、カノンもカノンで制御の効かないモンスター級の暴れ馬である、二人と外野一人のせいで、ただただ僕とミオの体力とやる気だけが削がれていった。
「…どうしよう…何もできないこのままじゃ…」
結局大した表現もできないまま時は過ぎ、”カッコカワイイ”というコンテストのお題には一歩も近付けず、あらかじめ決めておいた休憩時間がやってくる。
「このままじゃ…こんなただの部屋じゃコンテストなんて…」
好き勝手にクラフトするキョウイチとカノン、そして自分の世界に引きこもる僕はミオの暗い表情に気が付くことはなかった。
しばらくして初めて向き合って彼女の顔が視界に入ると、自分だけが楽しんでいた僕達は黙りきってしまった。
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