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僕達コンテスト組の四人は一旦部屋から出て近くの休憩所に行くと、それぞれ下を向きながら何も語らず休んでいた。
ミオは何かに絶望してため息ばかりをつき、僕はそんな彼女の足元しか見れない、キョウイチは僕達をちらちらと見ていて、カノンは大人しくミオの言葉を待っている。
正直始めはこんなムードになるとは思わず、もっと楽しく好き勝手やって、集合写真を撮ってバイバイだと皆が思っていた。
故にだからこそ僕達は彼女に何も言葉をかけられない、しかしキョウイチは深呼吸をして勇気を振り絞ると、そんな僕達に気を遣ってようやく沈黙を切り開いた。
「なあミオよ」
「…何よ」
「一番カンケーないオレが言うのはどうかと思うけどよ」
「言いなさいよ…あんただって参加者なんだから」
「じゃあ言わせてもらうぜ?…お前さ、なんでコンテストに参加したいんだ?」
「なんでってそれは…」
「キョウイチ、それは聞かない約束だろ」
「いやそれが分からないとよ、どこまでがんばっていいのか分かんねえだろ。優勝か?準優勝か?お前はこのコンテストで何になりたいんだよ」
彼の言うことはもっともであり、僕達は短距離走のようにゴールテープが無いと走ることはできない。
僕達は三人は何も言わずに彼女の言葉を待ち、そして通路の陰に隠れているカナタとヒトシは息を飲んだ。
やがてミオは何がおかしいのか鼻で笑うと、このコンテストに秘めた自らの目的を吐き出した。
「…参加賞が欲しいだけよ」
「参加賞ォ?」
「私が描いたぬいぐるみのデータがたまたま参加賞の景品に選ばれて、それが欲しいからコンテストに参加したいだけ。だからがんばる必要なんてないの。これでいい?」
「なんだよそりゃ…」
「お題に最低限のラインなんてないし、最悪部屋に何か一つ置いておけば参加したことになるわよ…今のままでも十分ってこと。これ以上はただの自己満足なんだから、話し合うだけ馬鹿馬鹿しいだけなのよ…」
彼女の目的は既に達成されており、これ以上こだわる必要も無駄な努力をする必要も無い、ここから先は本当の「自己満足」の領域だった。
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