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「よう、カナタ」
「キョウイチくん!」
キョウイチくん、この場にやってきた人物は男子一番のバカこと彼である、教室で僕の左側に座っている声のでかいやつで、ぼさぼさ頭の荒くれ者だ。
そんな彼がここに来るなんてあまりにも意外すぎて、僕は思わず目を丸くした、僕が何を思っているのか彼は悟ったようで、気持ち悪そうな嫌な顔をした。
「なーにシンカなんてやつに絡んでんだよ…ってそれエンバーディーじゃんか!」
「…うん、シンカくんが学校に持ってくるの珍しいから僕も気になっちゃってさ」
「はーつまんね、”ゲンシジン”もやっぱ持ってたんだな。まっそりゃそーだよな、持ってねえやつなんて今時いねーわ」
現にこうして原始人呼ばわりされるような認識のはずなのに何故ここに来たのか、バカの考えている事はよく分からないものである。
どうやら僕がエンバーディーを持ってきている事には気付いていなかったようで、ここへは別の理由で来たと考えられる、僕じゃないならカナタに用があるのか、とてもじゃないが彼とカナタにまともな接点があるとは思えないが。
「で、どうなんだよ、”バトル”の方は。腕前は?カナタよりはつえーのか?」
「バトル?」
「…残念だけど”バトル”はやってないみたい」
「けっ、男子なのにやってねーとか。オレの凄さを思い知らせられねーじゃんか、やっぱシンカってつまんねーやつ」
「まあまあみんなやってるわけじゃないから」
「これこそまさにキョウザメってやつだわ。まっ、やってねーならいいわ。そんじゃ、じゃあな」
そう言うと彼は特に何か聞く訳でもなく、通りすがりに声をかけてきた友人のようにあっさりと何処かへと去っていった、一体何を考えて話しかけてきたのか。
それともそれ自体に何か意味があるのか、この時はまだ何も分かっていなかった、分かるはずもあるまい、カナタとキョウイチの関係性を。
エンバーディーを知らない僕は、エンバーディーで繋がった二人の心を理解できなかったんだ。
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