君は誰よりも

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電子的な放課後のチャイムが鳴り、僕はさっさと下校しようとランドセルに荷物を詰める。 だがその姿を見たとある女子が、血相を変えて近寄ってくると僕の事を指差して注意した、僕はある事を忘れていたんだ。 「シンカくん!今日は日直!」 その女子とは”委員長”と呼ばれるクラス委員長であり、要は第二の先生となってクラスを監視している存在だ、ちなみに名前はホノカというが、ほとんどの場合男子からは委員長と呼ばれる。 見た目は常に眼鏡の役割をしているエンバーディーをかけたおさげ髪の大人しそうな女の子であるが、しかしその内面はキレやすく実に面倒な性格であり、更に何故か女子からの人気も高いのが本当に厄介だった。 「日直は残って戸締り!まだ帰っちゃだめ!」 「ハイハイ…」 「ハイは一回でいいの!中学生になったら通用しないんだからね!?」 「ハイ」 とにかく彼女に逆らってはいけないと相場は決まっている、彼女は女子の実質的なリーダーで、対抗できるのは男子のリーダーであるジュンと、度胸だけは人一倍のキョウイチだけである。 「ふう…」 僕はため息を押し殺しながら立ち上がると、ランドセルに手に持ったエンバーディーを突っ込んで、教室の端から窓を閉めようと歩いていった。 気だるそうな僕の態度に委員長はため息を吐いていたが、それ以上は怒らず腕を組んでこちらの様子を伺った、こういうところが嫌われない理由の一つなのだろう。 「何考えてるか分からないんだから…」 僕は後ろからそんな文句が聞こえても気にせず仕事を果たしていった、幸い彼女の威圧感で教室に残る生徒はみんな帰っていた。 この状況ならば、エンバーディーを見られる事も、窓を閉めても何かを言われる事はないだろう、そこにいる人のものを勝手に手に取って眺めている委員長以外には。 「あれ?何これシンカくん、この…んん?」
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