君は誰よりも

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君は誰よりも

僕はあんなものに興味は無かった。 あんなものは子供を騙した商売のひとつだと思っていた。 「シンカ、ママ応募したら当たっちゃった!」 それなのに勝手にあんなものに応募して、当たった母はそれを僕に押し付けてきた。 「そんな顔しないで、丁度良かったじゃない?今時持ってないのシンカくらいでしょ」 そうやって決めつけて、反論の余地も与えずに、それを僕の顔に掛けてくる。 「いらないよ、ママが使えばいいじゃんか」 「ママは遊ばないから何個もいらないの。いいからほら、凄い似合ってるわよ?着けた方がかっこいいって」 かっこいいかなんて僕はどうでもよかった、別に女子にモテたいなんて思ってないし、同年代の子供に興味は無い。 「それはママから見て、でしょ」 僕が”ませている”事なんて母はよく知っているはずだった、そんな事で僕を釣れるなんて、今更思ってもいないはずだろうに。 「ママの意見は全女子の意見なの!もう、パパみたいに無駄にひねくれてるんだから…」 それでも僕は母の想いを断れなかった、もちろんそれには相応の理由がある。 「パパは関係無いよ、だって全然帰ってこないじゃんか」 「そうね、じゃあママに似たのかなー」 母はいつも家で一人だった、だから僕だけは母と一緒にいてあげなくちゃいけなかった、母の言う事は断っちゃいけなかった。 「あ、パパは今度は来週末に帰ってくるって」 父みたいに母に寂しい思いをさせたくなかった、子供の僕の中にあるものは、たったそれだけの事だったから。 「どうでもいいよ、帰ってきてもすぐどっかに行っちゃうんだから」 僕は母から貰った、特別な眼鏡をポケットに入れると、自分の部屋に戻って、大きなため息を吐きながら辺りを見渡した。 そしてとりあえず黒いランドセルにそれを入れると、ランドセルから宿題を取り出して、重い足取りで勉強机へと向かっていった。 それも宿題も何もかもくだらない、僕は心からそう思っていた。
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