596人が本棚に入れています
本棚に追加
私は、晴海さんの顔を覗き込んだ。
晴海さんは、また押し黙った。
小学生の時、両親が離婚し、母はさっさとお金持ちの男と再婚した。それから晴海さんの心は荒んで行った。
「あの男の子の事は好きだったの?」
「……。うん。でもあいつ、舞ちゃんの事会ったこともない癖に好きになりはじめて。マジ、むかついて……」
「だから、ナイフで刺した?」
こくん。と晴海さんは頷く。
幼稚くさい、呆れた理由だった。言葉を失いそうになったが、私は続ける。
「舞さん、あなたの事言わなかったんだよ。貴女がやったって」
「えっ」
不良じみた少女の顔がまた、柔らかくなった。根は素直な子なのだろう。どの子も。
最初のコメントを投稿しよう!