一 因縁と新年

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一 因縁と新年

「あけまして、おめでとうござります」  仙台藩兵具番小頭、百五十石の花村家に婿入りした雄太は、まず義父と義母にあいさつした。 寛政八年の正月。  きんとひきしまるような冷気が張りつめた、朝である。  小規模ながら竹林と枯山水を造った庭は雪景色であった。  居間で雄太のあいさつを受けた義父の花村孫左衛門は尊大に 「うむ」  とうなずいたきり、顔をそむけた。さすがに気づかいを見せるのは義母のお登美である。お登美はつきたての餅のような顔に笑みを浮かべ 「はい、今年もよろしくお願いしますね」  と娘の佐奈に聞かせてやりたいような愛想のいいことを言ってくれる。 「佐奈は一緒ではないのですね」 「ええ、……たぶん、寝正月を決め込んでいるのでしょう」  新妻は自分をきらっている、と思う。なぜなら (おれの実家、野原家とこの花村家は、仇敵同士)  先祖代々犬猿の仲なのである。  佐奈が雄太本人を嫌っているというより、そういう先祖からの「負の遺産」のために、若い夫婦の感情がうまく折り合わないのであった。
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