四 新年御前試合

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「悪く思うな。これでおまえは二日酔いだ。明日の御前試合には出られまい。おれと対戦してみっともなく負けるより、ずっとよいだろう。なにより、花村家のおまえが勝ち抜いて、我が家と並ぶことはゆるせぬのでな」 「お、おのれ……」  このときほど兄を憎いと思ったことはなかった。  したたかに酔っ払い、雄太は千鳥足で雄一郎のもとを去った。  どうやって花村家へともどったのか、記憶がない。  翌朝は、ひどい頭痛がした。  全身がだるく、いつまでも部屋が回っているようでもあった。 (勝たねば……絶対に、勝たねばッ)  にぶる全身の神経を目覚めさせようと、雄太は井戸の冷水を浴びた。 「昨日は実家でしたたかに酔って帰ってきたようじゃが、今日の御前試合にはよほど自信があるのだろうな。ふん、酒臭い剣士の技など、殿にお見せするわけにはゆかぬ。病と偽り、出場を取り消すがよいわ」  などと孫左衛門は皮肉を言ったが、佐奈はむしろ雄太を気づかうような表情だった。 「山椒の実をかんで、酒のにおいをお消しください」  辛い山椒の実を差しだした。雄太に白湯を飲ませたり、梅干をかじらせたりした。
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