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「あの家は呪われていたのかよ、全く」
それにしても、菊竹家で起きた事件はどれも不可思議なものばかりだ。おじさんとおばさんの事故、それから藤次の神隠し、最後は彼の祖母が自宅で自害。残された妹の美羽ちゃんは、精神的ショックの余り失声症になり、親戚の家に預けられる事となった。
「お婆ちゃんが亡くなったのは、子供夫婦の死と、更に孫まで失ったショックだったらしいけど。でも、おじさんとおばさん、それから藤次の件は違和感だらけだ」
藤次の両親は、いつも明るい人達だった。とても自殺をするなんて思えない。
写真の中の彼も、満面の笑みでピースまでする、そんな子だ。無邪気な彼の姿に、思わず目頭が熱くなる。
「藤次……本当はお前、どこかで生きているんじゃないか」
込み上げる涙を堪えながら、写真の中の藤次を見つめる。
「あれ……?」
不意に妙な違和感を感じ、今度は垣岩を見る。彼女は相変わらず無表情で、暗い影を落としていた。
「こんな時でも笑わないのかよ。最後までこの二人が仲良くなる事は無かったな、そう言えば。まぁ垣岩って口数も少ないし、正直根暗だったからな。藤次とは合わないかも……」
ここまで言って、ハッとある事に気付く。
「垣岩ってお母さんが亡くなったって。そりゃ親を亡くした子が暗いのは当たり前か」
鼓動が徐々に激しさを増してゆき、思わず右手で胸を押さえる。今まで当たり前だった感情が突然脳内で否定され、だが、その事実に僕の体は一切追い付けずにいた。
(そう言えば、妹の美羽ちゃんはおじさんとおばさんが亡くなった後、殆ど学校に来なくなっていたけど、藤次は普段通りだった。無理してみんなの前では明るく振る舞っていただけかもしれないけど……けど、それにしても)
─ 両親を一ヶ月前に亡くした子が、あんなに笑って居られるだろうか ─
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