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相変わらず誰もいない空っぽの家だったが、休む場所があるだけマシだった。
「はあ…はあ…」
やっとの思いで自室にたどり着き、ベッドに身体を放り投げる。
柔らかな温もりに包まれると、少しだけ楽になった。
呼吸が徐々に戻っていく。このまま眠りそうだった。
…しかし、すぐに現実に引き戻された。さっき職場で考えていた思考が蘇ってくる。
(そうだ。私…今月生理きてなくて、吐き気と頭痛。この症状、何度もテレビで観たことある…)
冷や汗が全身に流れ込んできて、寒くもないのに身体がガクガクと震え出す。
『もし相手の人に妊娠…とかさせられて、責任逃れされたら藤塚さんの人生が台無しになると思って、心配で仕方なかったんだよ…』
かなり前に、店長に言われた言葉を思い出す。
(え…嘘…。もしかして私…妊娠して…)
身に覚えがない訳ではなかった。基本、援交では相手に必ず避妊してもらっていた。
だけど、何度か、避妊しないでやったことがあるのだ。もちろん、料金は三倍にして。
自暴自棄になっていたのもある。それ以上に、1回で妊娠する確率は25%らしいから、簡単にする訳ないと楽観視していた。
(ど…どうすれば…とりあえず病院に…)
そこで思考を停止する。病院に行って、本当に妊娠していたらどうするればいいのだろうか。
ーー降ろす?それとも…産む?ーー
父親も誰か分からないような子供を育てる?
そんなことがこの家で出来るわけない。誰も協力してくれないのに。
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