自暴自棄の代償

5/8
前へ
/228ページ
次へ
相変わらず誰もいない空っぽの家だったが、休む場所があるだけマシだった。 「はあ…はあ…」 やっとの思いで自室にたどり着き、ベッドに身体を放り投げる。 柔らかな温もりに包まれると、少しだけ楽になった。 呼吸が徐々に戻っていく。このまま眠りそうだった。 …しかし、すぐに現実に引き戻された。さっき職場で考えていた思考が蘇ってくる。 (そうだ。私…今月生理きてなくて、吐き気と頭痛。この症状、何度もテレビで観たことある…) 冷や汗が全身に流れ込んできて、寒くもないのに身体がガクガクと震え出す。 『もし相手の人に妊娠…とかさせられて、責任逃れされたら藤塚さんの人生が台無しになると思って、心配で仕方なかったんだよ…』 かなり前に、店長に言われた言葉を思い出す。 (え…嘘…。もしかして私…妊娠して…) 身に覚えがない訳ではなかった。基本、援交では相手に必ず避妊してもらっていた。 だけど、何度か、避妊しないでやったことがあるのだ。もちろん、料金は三倍にして。 自暴自棄になっていたのもある。それ以上に、1回で妊娠する確率は25%らしいから、簡単にする訳ないと楽観視していた。 (ど…どうすれば…とりあえず病院に…) そこで思考を停止する。病院に行って、本当に妊娠していたらどうするればいいのだろうか。 ーー降ろす?それとも…産む?ーー 父親も誰か分からないような子供を育てる? そんなことがこの家で出来るわけない。誰も協力してくれないのに。
/228ページ

最初のコメントを投稿しよう!

151人が本棚に入れています
本棚に追加