自暴自棄の代償

7/8
前へ
/228ページ
次へ
朦朧とする意識の中、そんな事を思い出す。 そして、弱々しい腕で扉を開けるとそこにいたのはーー (え…。本当に…?嘘…。何で…。) 紛れもなく、私が恋い焦がれていた人物だった。 「店…長…。」 「や、やあ。急にごめんね。」 店長の柔らかい笑顔が私の体調を少しだけ治した気がする。 「何で…。今日は仕事ですよね…?」 「そうだなんだけどね。レジのチーフから藤塚さんの話を聞いて、心配になったから抜けさせてもらったんだよ。あ、これ店の物だけどお見舞い。」 そう言って、渡された袋の中にはスポーツドリンクやヨーグルトなどが入っていた。 「あ、ありがとう…ござい…ます。」 それを遠慮がちに受け取る私。 目の奥が、つーんと痛んだ。 今日は忙しい曜日のはずなのに。やることいっぱいあるのに…わざわざこれだけの為に抜け出してくれたの? 私の…為だけに。 じんわりと心が暖かくなった。 …だけどすぐに切なさが込み上げてきた。 (この優しさは…全部上司としてなんだよね。私の事好きだからじゃない。私だけが特別じゃないんだ…。) 「大丈夫?すごく顔色が悪いじゃないかっ…」 「…いえ。大丈夫です。ありがとうございました。店長も早く仕事に戻ってください。」 俯きながら素っ気なく答える。爆発しそうな感情を抑えるため、拳をぎゅっと握り締める。
/228ページ

最初のコメントを投稿しよう!

151人が本棚に入れています
本棚に追加