やさぐれ少女の過去

7/10
前へ
/228ページ
次へ
その優しさが嬉しく、申し訳なかった。このままではダメだ。 もう少し、両親の優しさに触れていたら立ち直ることができる。きっと大丈夫。 そう思いながら毎日を過ごしていた。 …しかし、悪いことは重なるもので。 その頃から、両親の仲が悪くなったのだ。 会話もせずにすれ違う。一緒に出掛けることもなくなった。 それでも、私に対しては変わらずに接してくれていた。愛情は感じていた。 きっと今は、喧嘩しているだけ。時間がたてば元通りになる。 そう、信じて疑わなかった。 だけど、そうではなかった。 ある時、ママが私に何も言わずに出掛けて、しばらく帰ってこない日があった。 買い物にしては随分長い。こんな事、今までなかったから、もしかして事故に遭ったのかと心配になり、メールを送った。 しかし返事も来ない。 不安なまま時間が過ぎる。 帰ってきたのは夜だった。 「ママっ…お帰り。心配したんだよ!?」 「遅くなってごめんねぇ。お詫びに、ご馳走とケーキ買ってきたから一緒に食べよ♪」 不安そうな私とは対象に、ママはやけにご機嫌だ。 その態度に少し苛立ったが、無事ならそれでいいと思うことにし、夕飯を一緒に食べる。 「こんな時間までどこに行ってたの?」 何気ない会話のつもりだった。が、ママは不自然なくらい顔を紅く染める。まるで恋する乙女みたい。 …嫌な予感がした。どうか杞憂であってほしい。そう思いながら返事を待った。 「え、えぇーとね…。どうしようかなぁ。美里亜になら、言ってもいいかなぁ…。あのね…彼に会ってきたの。」 「え…。」 ーーカシャーンーー 動揺のあまり、スプーンを落としてしまう。しかし、拾うことすら出来ない。 そんな私にも気づかずにママは話を続ける。 「彼ってね、すごく優しくて頼りになるのよ。それに、一緒にいると落ち着くの。今日なんて、頭撫でられちゃってぇー…久しぶりにときめいたわ♪」 『彼』が、パパではない事はすぐに分かった。だけど状況が未だに理解できない。 「今度美里亜にも紹介するわね。あ、パパには内緒よ?」 「な…んで…?その人の事…好きなの?」 「え?ふふ、分かっちゃった?」 身体がガクガク震える。
/228ページ

最初のコメントを投稿しよう!

151人が本棚に入れています
本棚に追加