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その優しさが嬉しく、申し訳なかった。このままではダメだ。
もう少し、両親の優しさに触れていたら立ち直ることができる。きっと大丈夫。
そう思いながら毎日を過ごしていた。
…しかし、悪いことは重なるもので。
その頃から、両親の仲が悪くなったのだ。
会話もせずにすれ違う。一緒に出掛けることもなくなった。
それでも、私に対しては変わらずに接してくれていた。愛情は感じていた。
きっと今は、喧嘩しているだけ。時間がたてば元通りになる。
そう、信じて疑わなかった。
だけど、そうではなかった。
ある時、ママが私に何も言わずに出掛けて、しばらく帰ってこない日があった。
買い物にしては随分長い。こんな事、今までなかったから、もしかして事故に遭ったのかと心配になり、メールを送った。
しかし返事も来ない。
不安なまま時間が過ぎる。
帰ってきたのは夜だった。
「ママっ…お帰り。心配したんだよ!?」
「遅くなってごめんねぇ。お詫びに、ご馳走とケーキ買ってきたから一緒に食べよ♪」
不安そうな私とは対象に、ママはやけにご機嫌だ。
その態度に少し苛立ったが、無事ならそれでいいと思うことにし、夕飯を一緒に食べる。
「こんな時間までどこに行ってたの?」
何気ない会話のつもりだった。が、ママは不自然なくらい顔を紅く染める。まるで恋する乙女みたい。
…嫌な予感がした。どうか杞憂であってほしい。そう思いながら返事を待った。
「え、えぇーとね…。どうしようかなぁ。美里亜になら、言ってもいいかなぁ…。あのね…彼に会ってきたの。」
「え…。」
ーーカシャーンーー
動揺のあまり、スプーンを落としてしまう。しかし、拾うことすら出来ない。
そんな私にも気づかずにママは話を続ける。
「彼ってね、すごく優しくて頼りになるのよ。それに、一緒にいると落ち着くの。今日なんて、頭撫でられちゃってぇー…久しぶりにときめいたわ♪」
『彼』が、パパではない事はすぐに分かった。だけど状況が未だに理解できない。
「今度美里亜にも紹介するわね。あ、パパには内緒よ?」
「な…んで…?その人の事…好きなの?」
「え?ふふ、分かっちゃった?」
身体がガクガク震える。
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