*天才少年

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「あ、これはちょっと無理だから。別の楽譜を持って──」 「それで構いません」  言い終わらないうちに返された言葉に苦笑いを固めた。目を丸くしているアリシアの手から楽譜を取って無言で見つめる。 「あの、ベリル」  いくらなんでも初めてでこれを弾くなんて無理よ。アリシアの心配をよそに少年は楽譜を譜面板に置き、やや迷いながらも鍵盤を弾いた。 「え!?」  ぎこちないけど間違ってない。  時折たどたどしくはなるものの、その旋律は正しく奏でられていた。ここまでの天才少年だとはとアリシアは感嘆する。 「アリシア先生」 「え、何?」 「ここはどう弾けばいいのですか?」 「ああ、ここはね」  指し示されている箇所を確認し、ふとベルハースの言葉を思い出す──技術よりも感情の強調を──確かに、少年に技術を教える必要はほとんどないのかもしれない。  
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