*天才少年

1/6
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/190ページ

*天才少年

  ──次の日、アリシアと少年はグランドピアノを前にして楽譜をめくる。 「ピアノを触ったことは?」 「ありません」  答えた少年にアリシアが見せた楽譜は、十歳までの子どもが一本の指でも弾けるレベルのものだ。 「基本ならデータを見ました。その楽譜では私はすぐに終ってしまいます」  少し困ったようにアリシアを見上げる。 「そ、そう」  アリシアは慌ててその楽譜を仕舞い、別の楽譜を取り出した。しかし、それは彼女がベリルの勉強の合間に覚えようと思っていたもので、とても子どもが弾けるようなレベルじゃない。 「あ~……」  どうしよう、この二つしか持ってきてない。
/190ページ

最初のコメントを投稿しよう!