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「どうやったら一緒に帰れるかなぁ……。とわが居る時は武田くん声かけてくれるけど、私一人だと、手振って終わりなんだよね」  若菜は困ったように言うけれど、私の知らなかった事実に少し胸が踊って、ハッとした。  武田が若菜と一緒に帰らないのが嬉しい……とか……。やだ。私、本当は性格悪いのかな。  だめだこんなんじゃ。  ちゃんと、若菜の応援をしないと。 「じゃあさ、私も一緒に待ってようか? で、武田と一緒に歩き出してから、忘れ物したって戻るから」  そうしたら、若菜と武田が一緒に帰れる。しかも、自然に。  我ながらいい考えだと思う。だけど、心の中では、「何言ってるの、全然良くない!」ともう1人の私が叫んでいた。  駅に着くと、私の乗る方向は行ったばかりで、もうすぐ若菜の乗る逆方向の電車が来るところだった。 「じゃあ、とわ、また明日ね」  若菜を見送って、電車を待つ間、私の頭の中は武田のことでいっぱいだった。  中一のとき。全員参加のクラス対抗校内球技大会で、サッカーに振り分けられてしまって。あまりにも私が出来ないのを見かねて、ボールの蹴り方を教えてくれた。  結局、球技大会ではうちのクラスの女子はすぐに負けてしまったけれど、それ以来……武田と少し仲良くなって、好きになった。それから今まで、4年以上も武田に片思いしている。  私も武田の事好きなのに、……若菜が告ったら、若菜と付き合っちゃうかもしれないの?  私の方が、仲良いのに?  なにそれ。なにそれ。そんなの嫌だ。  私は、自分が思っていたよりもずっと、武田を好きなことを今更思い知ったのだった。
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