4/15
2746人が本棚に入れています
本棚に追加
/389ページ
 なんでよりによって若菜なんだろう。 どうして毎日一緒に居る若菜が、武田と付き合っちゃったんだろう。  他の人だったら、きっとこんなに辛くないのに……。  私は溜め息と一緒に目を伏せた。  目を開けると、視界は滲んでボヤけていた。  私、なんで若菜に私も武田が好きなんだよって言えなかったんだろう。半年も前に聞いたんだから、いくらでも言う機会はあったのに。  手の甲で目を擦っていると、階段の上から男の人の声がした。 「そんなに好きだったの?」  顔を上げて、息を呑んだ。  階段の手すりに寄りかかっていた背の高いその人は、ゆっくり階段を降りて来て、私の前で足を止めた。  話したことは無いけど、知っている……というか、入学当初から学校では有名な人だ。  サッカー部の、桜庭くん。 「武田のこと、泣くほど好きだった?」  何故言い当てられたのか分からなくて、私はただ桜庭くんを見あげた。背、凄く高い。クラスで2番目に背の小さい私は、大抵の男子を見上げるけれど、目の前の桜庭くんはかなり背が高く見える。 「別に、そんなんじゃない。泣いても、いないし」  私は精一杯強がった返事を返す。
/389ページ

最初のコメントを投稿しよう!