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「俺も意外だったけどね。お友達の方と付き合うとか本気で予想外だったし」  さも事情を知っているような口調で言って、桜庭くんは屈んでわたしを覗き込んだ。 「そんなに好きだったら、奪っちゃえばいいのに」  端正な口元に微かに笑みを浮かべた桜庭くんは、私を蛇の道に誘うように囁いた。 「無理だよ」 「なんで? 結婚してないし、別に問題ないよ」 「私はそういうの嫌なの」 「ふぅん。真面目だね。別にキスなんて大したことじゃないよ?」  まだ、キスなんてした事ない私には、それに返す言葉が分からない。  なんで初対面なのにこんな話してるんだろう。しかも、桜庭くんと。  桜庭くんは、入学当初から色んな子がかっこいいと騒いでいて有名な人だったけれど、今では少し違う意味合いで有名だ。それは、すぐに彼女が代わって、二股してたりもするとか、そんな話で……要は、桜庭くんはかなり女の子と遊んでるから、来るもの拒まずですぐ付き合えるけど付き合うならそのつもりで、という噂なのだ。
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