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「ねぇ、とわ。コミュの教科書持ってる?」
「も……持ってる、けど」
「貸してくれない? 出来ればノートも。ほら、予鈴なるから早く」
あまりにも自然なやり取りで、私のコミュニケーション英語のノートと教科書は、桜庭くんに持っていかれた。
そして、お昼休みの終わりが近づく今、私は時計を見て悩んでいた。
どうしよう。桜庭くんに貸したノートと教科書がまだ帰ってこない。次の5時限目、私のクラスはコミュニケーション英語なのに。
休み時間の残りが5分になって、私は諦めて席を立った。
桜庭君って、何組なんだろう。仲のいい友達の居るクラスではなかったような気がするし、隣とかそんなすぐ近くのクラスでもなかった。
私はとりあえず教室を出て、通るすべての教室をチラチラと覗きながら、あの目立つ長身の姿を探す。
そうして私はG組の教室で、何人かの男の子と桜庭くんが話しているのを、やっと見つけたのだ。
気づいてくれたら良いのに……。じっと見つめてみたけれど、桜庭くんは気づくはずもない。
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