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G組に仲のいい友達は居ない。教室には入りにくいから、誰かに呼んでもらわないといけない。男子を呼ぶのは目立つから嫌なのに。しかも桜庭くんだなんて。
「なんか用?」
後ろから声をかけられて、咄嗟に出かけた悲鳴をなんとか飲み込んで振り返ると、男子が1人、邪魔なんだけど? と言いたげな表情で立っていた。
「あ……あの、桜庭くん、呼んで貰えますか」
「桜庭?」
問い返してくるのと同時に、その人は一瞬私の全身に視線を走らせて、そして、教室の奥へ声をかけた。
「桜庭ー。女」
その呼び方に悲鳴をあげたくなる。何それ。なにその”女”って。名前分からなくたって、もっとほかの呼び方あるでしょ?
恥ずかしくて俯いて足元を見ていると、私の視界に、大きな靴が入り込んできて、私の前で止まる。
「とわ? どうしたの?」
見上げると、教室の入口の鴨居に手をかけて桜庭くんが首をかしげていた。
「どうしたのじゃないよ。コミュのノートと教科書、返して」
「あぁ。ごめん。待ってて」
桜庭くんの背中を見送って、私は教室の入口を見上げた。
桜庭くんの頭は、教室の入口にぶつかるギリギリ位に見えた。私が手を伸ばしてやっと届く鴨居に、肘を曲げて余裕で手をかけていた。そんなことで桜庭くんの背の高さを実感していると「おまたせ」という声と共に、私のノートと教科書が差し出された。
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