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---- 「若菜、帰り武田と帰りなよ」 「え?」 「だって、2人で居れるの、帰りくらいでしょ? 私の事は気にしなくていいからさ。ね? じゃあ、また明日ね」  私は若菜の答えを聞かずに、鞄を持って逃げるように部活へ向かった。  私は溜め息をつきながら書道室へ向かい、道具を広げる。  別に私、もう毎日部活に来なくても良いんだよね……。  書道部の活動は、作品を個人で提出さえすればいいので、全体としてはゆるゆるで。数枚しか書かないで、話しだけして帰る日だってある。それでも毎日部活に行っていたのは、武田と一緒に帰る機会を増やしたかったからだ。  今日、このまま帰っちゃおうかな……。  グラウンドに視線を投げると、運動部が練習をしているのが、豆粒みたいに見える。今帰れば、武田にも、若菜にも会わずに帰れるはずだ。  だけど。 『いい子で待ってるんだよ、とわ』  桜庭くんの言葉を思い出して、私は口をとがらせた。  なんか、ちっちゃい子とか、犬とかに言うみたい。桜庭くんにしたら、そりゃあ私は小さいだろうけれど…… 一応、同い年のはずなのに。     
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