全部、きみだけ

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 ドクン ドクン と心臓の音が身体の内側から響いてくる。その鼓動は湊に聞こえているんじゃないかと思う程に大きく感じられて、視界が揺れる気がするほどに、強く脈打っていた。  湊の指先がゆっくりと襟の中を沿って進んでいく。音もなく襟の後ろにあったリボンの留め具が外れたのが、微かな気配で伝わってくる。湊の長い指が、とわの胸元からリボンを取り去ると、そのまま制服のボタンを外していく。  ボタンを全て外されたブラウスの胸元に湊の指が入ってくる。鎖骨とキャミソールの縁を撫でて、大きな手がとわの肩を包み込んだ。  あぁ、どうしよう。 「ねぇ、湊、待って」  そう声を発して、目が覚めた。  ……。  ぱちぱちと瞬きする。見上げた先にあるのは、見慣れた自分の部屋の天井。湊の姿は見えない。もちろん、抱きしめられてるなんてわけもなく、とわの身体をふんわりと包んでいるのは、夏用の軽く柔らかな羽根布団。  …………え。やだ、今の夢?! どーゆー夢みてんの、私。  ベッドに身体を起こして、とわは熱く火照った頬に手を当てる。 「やだもぅ……」  この間、湊とそういう雰囲気になったから。そのせいでこんな夢をみたのは明らか。でも、それにしたってこんな夢、見なくたっていいのにと思う。  時計を見れば、いつも起きる時間までもう少し。スマホのアラームを止めて、とわはため息をついた。夢だと分かってもなお、胸がドキドキして頬が熱い。
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