全部、きみだけ

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 夢の余韻でふわふわとした意識のまま、リビングに向かうと、キッチンに居た母・遥が顔を上げて笑った。 「おはよう。朝何食べる?」 「おはよう。……んー……、どうしよう。菓子パンとかある? 今あんまり食べれそうにないから、持って行ってお腹すいたら食べる」  空腹感は全くなかった。まだ頭も足元もふわふわしていて夢の余韻に引き込まれそうな、そんな気分だった。 「そう? 幾つかあったけど。これでいい? ……とわ、顔赤くない?」 「え、そんなことない。大丈夫!」  そんな親に分かる程に頬が火照っているなんて、余計に恥ずかしくなって遥が出してくれたパンを何かも見ないで掴むと、とわは自分の部屋に逃げ帰った。 「あぁ、もう……ほんとやだ……」  ドクンドクンと今も早鐘のように心臓は鳴って、頬を触れば燃えだしそうに熱い気がする。  だって、今まで1度もそういう事してこなかったのに……。  普段、湊は場所を選ばずにじゃれてくるし、当たり前のように抱き締めてくるし、放課後は当然のように膝に座らせられる。だけど、とわの脚を撫でてきたりとか、胸を触ろうとしたりとか、そういった触り方をしてくることは無かった。
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