全部、きみだけ

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 制服に袖を通して、ボタンをはめながら胸元を見下ろす。キャミソール越しで何となく分かる程度の緩やかな膨らみ。男の人って……大きいほう好きって言うよね? やっぱり湊も胸は大きいほう好きかな? とか余計な事を考えて、とわはまたしても1人なのに恥ずかしくなる。  なんなの今日。私の頭大丈夫?  制服に着替えてベッドに突っ伏して時計を見ると、朝ごはんを食べていないぶんいつもより早い。  寝返りをうって見上げると、朝起きた時とおなじ見慣れた天井。そこに、記憶の中の湊がオーバーラップして来る。  いつもよりも熱っぽい眼差しも、名前を呼んでくれた切なげな声も、首筋に触れた唇の熱も、身体にかかる湊の身体の重みも……あんなに緊張していたのに、忘れられない。むしろ……恋しい。  ていうか私、今日まともに湊の顔見れる? こんな、会ってもいないのにずっとドキドキしてて。  そもそも、湊の前に武田に会うんだよ?  色々ダメな気がする。  いつもの時間より少し早いけれど、部屋にいたら頭がおかしくなりそう。そう思って、いつもより早めに家を出た。 「瀬川、おはよ」 「おはよう」  駅のホームで大抵武田と会う。相馬とは最近あまり会わなくなって、少し寂しいような、安心したのと両方。割合は、安心の方が大きい。
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