全部、きみだけ

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 ───  ……冷たい。  頬から首筋に当てられた何かの冷たさに目を開けると、心配そうに湊がとわを覗き込んでいた。その向こうに、武田がいるのも見えた。ぱちぱちと瞬きをして、記憶を辿る。  もしかして、倒れた? 「とわ? 大丈夫?」  湊に肩を抱かれて、駅の通路にあるベンチに座らされていた。頬に当てられていたのはスポーツドリンクのペットボトルだ。 「湊……。ごめん、ね? 急に立ってられなくなっちゃって……」  実際のところは、急にと言うよりは湊と会ったら安心して糸が切れたのだが、流石にそれは言えなかった。 「もー、びっくりしたよ。こんな熱あんのに何で学校来たの」 「……え?」 「え? って。気づいてなかったの? 抱っこしたら、あっついんだもん。よくここまで来れたね」  そう言いながら、湊はとわの体温を確認するようにとわの頬と首筋に手を当てて「だめでしょ、この熱」と苦笑いした。 「やっぱ熱あったんだ。ごめん、顔赤いとは思ってたんだけど」  嘆息した湊の隣で武田が苦笑いする。  武田やお母さんの言ってた顔赤いって……そういう意味? 私が朝から湊との事を反芻してたのがバレてたんじゃなくて?  なんだか変なことを考えていたのは自分だけ、と言うのを改めて思い知らされてとわは頬に両手を当てた。 その頬は相変わらず燃えそうに熱い。  こんなに熱いの、……変な妄想してたからじゃなくて、熱があったからなの?  考えたら恥ずかしくなる一方だ。
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