全部、きみだけ

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「とわ、お母さんまだ家にいる?」  言われて電光掲示板の時計を見ると、普段遥が家を出る時間を少し過ぎていた。 「えー……と。もう仕事行ったと思う」 「そっか。んー、学校より家に帰った方が歩く距離短いよね。とわ、送ってくから帰ろ?」 「え、大丈夫だよ。ちょっと休んだら1人で帰れるから」 「何言ってんの。倒れたのに1人で帰せるわけないでしょ。お母さん仕事行ったんじゃ、迎えもすぐには来れないじゃん」  湊ととわのやり取りに、気まずそうに武田が割り込んだ。 「えーと。俺、もう行って平気な感じ?」 「あぁ、うん。行っていいよ。とわが駅で倒れたから家まで送るって瀧に言っといて」 「りょーかい。じゃ、瀬川帰ってちゃんと寝ろよ」  武田はとわにそう声を掛けた後、湊の肩に手を添えて小声で告げる。 「ちゃんと寝せろよ?」 「当たり前だろ。お前、何考えてんだよ」  蹴りを繰り出した湊を軽くいなして、武田は手を振って歩いていった。
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