全部、きみだけ

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「一応お母さんに電話してみて?」  湊に言われるままに電話を掛けてみたものの、案の定出ないので、メッセージを残した。 「出なかった。伝言は入れたから大丈夫」 「そっか。じゃあ、聞いたら連絡くるよね。 歩けそう? 無理そうならもう少し休んでもいいよ?」  差し出された湊の手をとって立ち上がると、頭痛はまだ少し残っているけれど、さっきのような酷い目眩はしない。 「大丈夫。ねぇ私、1人で帰れるよ。学校行って?」 「だから、ダメだって言ってんじゃん。別にちょっと位遅刻したって平気だよ」  湊と手を引かれてホームへの階段を登ると、ちょうど家の方へ向かう電車が到着して、ドアが開いた所だった。  朝なのに電車に乗るから、自然と同じ高校の生徒の視線を集めるが、湊は全く気にかけずに、混んでいる電車の中とわを胸に抱き寄せた。 「混んでるし、寄りかかってていいよ」  その言葉通り、混んでいる車内では多少くっついていても目立ちはしないだろう。蒸し暑さは変わらないけれど、今は湊に寄りかかっているからか、安心感がある。むしろ、頬を寄せた湊の胸から伝わってくる心地好い鼓動と体温と匂いに安心しすぎてしまうほど。電車の規則的な音も加わって眠くなってくる。しっかり抱き留めてくれている湊の腕の中で、とわは目を伏せた。
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