全部、きみだけ

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「とわ、歩ける?」  湊の声にぼんやりと頷いて、湊の手に導かれるままに電車を降りる。微睡んでいる間に、家の近くに着いたのだと見慣れたホームに降りて初めて気がついた。 「大丈夫? ちょっと座ろうか」  とわが答えるより先に、すぐ近くにあったホームのベンチに座らされた。とわの額と頬を撫でて、湊は眉を下げる。 「大丈夫、だけど……ちょっとお腹すいたかも」 「朝ごはん食べてないの?」 「うん。食べれなかったから、持ってきてたんだけど……」  そもそも私、何持ってきてたんだっけ?  とわがリュックを開けて中を確認すると、出てきたのはデニッシュあんぱん。 「……無理。今、こんなの食べれない」  泣きそうな声で零したとわを、ぷはっと湊が笑う。 「泣かないの。コンビニでなんか買って帰ろ」  頭をポンポンされると、熱があるからか皮膚がピリピリと過敏になっているのがわかってとわは、ため息をついた。その吐息を自分でも熱いと感じて、熱がある事を妙に実感してしまった。  デニッシュあんぱんをリュックに戻しつつ、とわはパーカーを引っ張り出す。 「寒い?」 「少し。電車では平気だったんだけど……」  電車の中では人に埋もれかけていたし、なにより湊にくっついていたから暖かくて平気だっただけかもしれない。先程、電車を下りてからは寒気がしていた。
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