全部、きみだけ

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 ぼんやりとゼリー飲料を手にしたまま惚けているとわを湊は覗き込んだけれど、とわの瞳の焦点があってこない。 「とわ? とーわ?」  手の中にあったゼリー飲料のパックを取られて、はっとして湊を見ると心配そうな表情の湊と目が合った。 「食べれないならもういいから、薬飲んで寝よう?」 「湊 学校行くでしょ? お見送りしてから寝る」 「とわが寝てから行くよ。どうせ1時間目は間に合わないし。ほら、ベッド入るよ」  湊にベッドに押し込まれかけて、とわは「待って」と手で制した。 「寝るなら着替えないと……スカート皺になっちゃう」 「あぁ、そうだね」  そして訪れた微妙な沈黙。 「え……と……。湊、その…… 」 「……あ、そっか。ごめん。外出てるね?」  湊が出ていった部屋で、部屋着に着替えて、とわは制服をハンガーにかけて、息をついた。 湊が寝るまで居てくれるのは、遅刻させて申し訳ないと思いつつも嬉しい。学校なのは分かってても、湊が帰ってしまうのはやっぱり寂しかったから。もっと湊に甘えたい気持ちが確かにあった。
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