全部、きみだけ

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「湊、もういいよ」  部屋着に着替えてからひょこっとドアから顔をのぞかせたとわに湊は苦笑いする。 「寝てていいっていうか、あんな熱あるんだから早く寝なさい。薬は? 飲んだ?」 「まだ」 「早く飲むよ」  薬を飲まされて、今度こそ強引にベッドに入れられたとわは、朝の夢を思い出して恥ずかしくなって掛布団を目のすぐ下まで引き上げた。そんなとわの髪を、ベッドに座った湊がなでなでと撫でる。 「一人で帰さなくてホントによかった。絶対にどこかで行き倒れてたよね」 「そんなことないもん。湊が……居たからだもん」  とわの言葉の意味を測りかねて、湊が小首を傾げた。 「湊の顔みたら……、もう大丈夫って安心したから」  湊に会うまでは平気だったんだもん。と、とわは少々強がった答えを返す。 「……なにそれ。可愛い過ぎるんだけど」 「え?」  きょとんとしてとわは見上げるけれど、湊からは布団から上目遣いに覗く熱に浮かされて潤んだ双眸が見える。  とわの顔の横に湊が手をついて、その重みでベッドが少し沈み込む。ベッドの上で湊を見上げる。夢と全くおなじ状況に、とわは息を呑んだ。 「俺見たら安心したとか……ほんと可愛いんだから」  覆い被さるように湊はとわの額にキスをすると、とわが目元まで引き上げていた掛布団に指をかけてそっと引き下ろす。そしてそのまま、とわの目尻や頬にキスを落とした。
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