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「ちゃんと風邪治して、夏休みはいっぱいデートしようね」
かぁっと頬を染めたとわは、また掛布団を引き上げて潤んだ瞳で湊を見る。
「夏休みは、勉強するのっ」
「じゃあ、お勉強デートね。 図書館でも家でも、場所は色々あるしね」
「……図書館。絶対図書館」
「家じゃダメなの?」
「だめ。絶対」
「何で?」
「何でって……」
だって、絶対に勉強にならないと思う。と言いたいけれど、漂う薮蛇の気配にとわは口を噤んだ。そんなとわを見透かして、湊はクスクスと笑う。
「真面目に勉強するよ? 時々ちゅーはするけど」
「しなくていいの!! もう! 湊、学校行くんでしょ?!」
「行くよ。とわが寝たら。眠れないなら添い寝して寝かしつけてあげよっか?」
「そ……そい……。だめっ 風邪うつるから絶対だめっ」
頬を染めて言い返してきたとわを「冗談だよ」と笑って、湊は掛け布団を握りしめていたとわの手を絡めとる。
「添い寝は俺も一緒に寝ちゃいそうだから、手繋いでてあげる。おやすみ」
さっきまでふざけていたのに、愛おしげにとわを見つめて、もう一方の手で髪を優しく撫でてくれるから、相変わらずの素早い切り替えにとわはついていけない。
それでも、目をふせて優しく頭を撫でてもらっていたら、心地よくて眠くなってきた。
「湊」
「ん?」
「居てくれてありがと」
「ん、早く元気になってね」
とわが眠りに落ちるのを見届けて、湊は繋いでいた手を離すと、とわの鼻先まで隠していた掛布団を少し下げて、眠るとわの唇にそっとキスをひとつ落とした。
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