全部、きみだけ

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 ***  結局、湊が学校に行ったのは2時間目が始まって少しした頃。数学の授業中で、副担任の齋藤は遅刻の理由を知っていたのか、さりげなく嫌味な言い方をされたが、そんなのは知ったことじゃない。  体調不良なら、送っていくよりも学校で休ませておけって?  そんなもん、とわに負担が少ない方選んだに決まってんだろ。普段父親が車を使うから、母親に連絡が着いたところで、車で迎えに来れる訳でもない。父親にすぐ連絡がつく保証もない。駅から学校まで歩くよりも家に帰った方が歩く距離も短かった。  こんだけ条件揃ってたら、学校に連れてくる意味ないじゃん。家に連れて帰るに決まってんじゃん。  イライラしながら1時間目の物理の宿題の範囲を書き写していると、武田の声がした。 「お、桜庭居んじゃん。瀬川大丈夫だった?」 「ん、寝かせてきた」 「ふぅん……」 「何だよ?」  声音に含まれる揶揄の響きと、含みのある笑みを浮かべた武田の表情に神経を逆なでされて、湊が少し不満げに武田を睨むと、そんな湊を見て武田は面白そうに喉を鳴らして笑う。
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