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「いやぁ、ちゃんとすぐ来たなと思って。当分来ないと思ってた」
「何で」
「何でってそりゃぁ……。誰もいない家に二人きりだし? 今朝の瀬川、なんか可愛かったし?」
含みのある笑いを口元に浮かべた武田を「お前、何考えてんだよ?!」と蹴ろうとすると、武田は笑って身を躱す。
「何って、看病してやりたいじゃん。え、湊ちゃん、もしかして何かエロいこと考えてたの?」
「……うるせぇ」
「いやー、お前案外そーゆーとこ真面目だよな。あ、瀧が来たら職員室来いっつってた」
武田はそう告げて、ケラケラと笑って帰っていった。
残された湊は、真面目もくそもあるかよ?! 39℃近い熱があるとわに何かしろと? 出来るわけないだろ?! お前、朝駅で別れた時とか絶対そーゆー事指してただろ?!と、胸中で一頻り毒付いた。
電車の中、安心しきってくったりと胸に預けられた火照った身体。キスした時に零れた熱くて甘い吐息と熱に浮かされて紅く染った頬に潤んだ瞳。しかも、自分を見たら安心したなんて言われて。眠りに落ちる前のとわの甘えた声を思い出したら、ため息が漏れた。
「なんか可愛いじゃねーよ」
湊はボヤいて机に臥せる。
“なんか”どころじゃない。ホントに超反則級に可愛かったから。添い寝してあげようか? なんて言ったけれど、あんなの腕の中で言われたら、たまったもんじゃないよ。
心臓がドクドクと早鐘の様に鳴っていた。絶対に今、顔が赤い。そんな自覚があった。
───
全部、きみだけ end
短編、お付き合い下さいましてありがとうございました。
冒頭あんなだったにも関わらず、またしても湊お預け……。す、すみません。また短編(中編?)書けたらまた更新しに来ます。月末とわの誕生日だし何か書けたらいいな。
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