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 帰りのSHRが終わると、私はもう一度席に座って帰りの支度をする。  筆箱を鞄に入れていると「瀬川ー」と呼ばれたので、私は、声の主である武田の席を振り返った。 「今日の体育、女子何した?」 「バレーボールだったよ」 「サンキュ」  武田は手元の日直日誌に視線を落とす。 そっか、今日、武田 日直だったんだ。体育あってラッキー、と小さく笑みを零した。  武田は、中学1年から高校2年の今まで、実に5年間もずっと同じクラスの男子。そして、そのほとんどの期間、私は武田に片思いをしている。  片思いと言っても、告白するとかそんな勇気もない私は、今みたいにちょっと話したりするので十分だった。 「とわ、先に行くね。また後でね」 「うん」  若菜が手を振って教室を出ていくのを見送って、私も部活に向かう。  若菜は家庭科部で、私は書道部。若菜の部活がある時は帰りはいつも、若菜と一緒に帰る。  書道部の活動日は特に決まっていない。顧問の瀧先生が居る日は書道室は開いていて、たいてい放課後は誰かしら部員がいて、話をしたり、書いたりして、まったり時間を過ごす。  人数もそんなに多くなくて、時々しか来ない人を合わせても全部で15人くらいで、みんな仲がいいと思う。  書道室は、東校舎の3階の端。下は吹奏楽部が活動している第一音楽室で、ちょっと賑やかだけど、窓を開けておくと風通しも良くて、だんだんと暑くなってくるこの季節でも過ごしやすい場所だ。
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