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「文化祭なんだけど。今年は、大判の作品は書きたいかな? 制作する場合は夏休みを利用します。僕はどっちでも構わないので、みんなで相談して決めてください。体育館の使用願いを早めに出さないと取れなくなるから、来週までかな。それから、 まだ先だけど各自、文化祭の個人作品の題材についても考えておくように」  以前居た先生が熱心だったらしく、うちの書道部にはパフォーマンス用の大きな筆もある。去年はやらなかったから私は使ったことがないけれど。瀧先生は、自身もそれなりに熱心にコンクールに作品を出す書家だけれど、部活に対してはゆるゆるだ。  何はともあれ、書くものを探していた私は、ちょうどよく回ってきたコンクールの課題に視線を落とす。  古典は徒然草の一文、現代文は、何かの本から抜粋したと思しき小難しそうな書道についての心得みたいなのが課題として書いてあった。そして、臨書は漢文の一文。  とりあえず、徒然草にしよう。  堅苦しい文章はあまり好きじゃないし、臨書も……別に嫌いじゃないけど楽しくない。  時々共感できて、平仮名が交じる徒然草や枕草子なんかの古文や万葉集や古今和歌集といった和歌書くのが、私は好き。  そうして書き出せば、あっという間に部活の終わりの時間が近づいていた。
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