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 道具を棚に戻しながら視線をグラウンドに向ける。 運動部はまだ練習を続けていた。  私が教室に戻ると、すぐに若菜も戻ってきた。 「とわ、お待たせ。で、これは今日焼いたの」  どうぞ、と若菜が差し出したのは、白と茶色の市松模様のアイスボックスクッキーだ。 「やった。おなか空いてた」  若菜は、よく部活で焼いた菓子をお土産に持ってきてくれる。  クッキーを食べてから教室を出て、グラウンドの前を通り掛かると、練習を切り上げている部もチラホラ見受けられる中、サッカー部は未だに練習中だった。私はその中から、顔ははっきり見えないけれど、武田の姿を見つけ出していた。 「ねぇ、とわ。好きな人、出来た?」 「え?」  心の中を見抜かれたような気がして、思わず声が上ずっていた。  私の好きな人。それを若菜に言う訳には行かない。  何故なら……若菜も武田が好きだから。  こういうのは、先に言ったもん勝ちなんだと、若菜に「武田くんが好きかも」と言われて初めて気づいた。  せめて、言われたときに即座に言えばよかったのに……。若菜に言われて半年近くも経った今言うのは憚られる。
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