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やはり教えてあげるべきだろうか。恥ずかしい思いをさせてしまうが、お客様に見られてこっそり笑われたりするよりはマシだろう。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥って言うし……違うか。
いくら何でもお客様の目の前で指摘するわけにはいくまい。少しの間他の人にレジを任せて、脇田さんに声を掛けた。
「脇田さん。ちょっといいですか?」
「はい」
振り向いた脇田さんはいつも通りとても朗らかな表情だ。
「ちょっとお話したいことがあるんで、奥に来てもらっていいですか?」
「……話、ですか?」
途端に脇田さんの顔が警戒とか不安の色を帯びる。別に「これから叱りますよ」みたいな口調でもなかったと思うけど……。
「すぐ済むことなんで」
軽い調子で言いながら手でバックヤードを示してみせると、脇田さんは大袈裟なくらい神妙な面持ちで「……わかりました」と頷いた。
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