自爆

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 そんなに深刻な顔しなくてもいいのに……と思いつつバックヤードに移動する。  先導していた私が振り返って口を開きかける前に、 「……田上さん、気付いてしまったんですね」 脇田さんの方から喋り出した。見れば俯いてひどく落ち込んでいる様子。俯いたことでチャックが目に入り気付いたのだろう。ちょっと気まずい。敢えて明るく言ってみた。 「誰に教えたわけでもないですから、他の人にはばれてないと思いますよ?」  すると脇田さんは少し顔を上げて、卑屈にも見える暗い笑い方をした。 「お情けですか……。ありがとうございます」 「お情けって……」  ……何だろう。こんな根暗なキャラだったろうか? 人の社会の窓が開いていたからといって、それを他人にぺらぺら教える人なんて普通いないだろうに。と言うか気付いたなら早くチャック上げればいいのに。
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