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怪訝顔の私に、脇田さんは重そうに口を開いた。まるで二時間サスペンスで犯人が犯行を自白する時みたいな哀愁漂う声だった。
「……僕が○×電器のスパイだってことが皆に知れたら穏便には済まないだろうから、気付いても黙っててくれたんでしょう?」
……え、……スパイ?
耳慣れない、そしてあまりにも予想外の言葉にただぽかんとしてしまった。○×電器といえばうちの店のライバル店で、最近業績がうなぎ登りのうちとは逆に売り上げが伸び悩んでいる、と聞いたことはあるが……。
脇田さんは私の様子になど気付かないようで、しょんぼりと項垂れている。
「『このことは黙っといてやるからさっさと出て行け』って言うために僕をここまで連れてきたんでしょう?」
「……いえ、私はただ脇田さんのズボンのチャックが全開だって教えようとしただけです」
「えぇっ!?」
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