【第7話】習慣

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【第7話】習慣

  「鈴ちゃんは偉いなあ。まだ高校一年生なのに、トイレでも受験勉強はじめてるんだって?」 ある日、鈴は祖父からこんなことを言われた。   「ま、まあね?」 どこか気まずそうに答える鈴。それもそのはずだ。 鈴はいつも家族が起きている間にトイレを使用すると、かならず「受験モード」に設定したまま出てくるようにしていた。 本当は あの 「KAWAYA君モード」で遊んでいたのだが・・・。  学校でも家でも「クール」なイメージで通っていた鈴。 少女漫画を読む趣味もない。 そんな鈴があろうことか、色々な「モード」を試した中でどうしても放っておけなくなったのが 「KAWAYA君モード」だった。 かわや君は優しい。 時に相手がAIトイレであることを忘れてしまいそうになるくらい。 学校で起こった嫌な事、勉強が難しくて嫌いな事、家族に言えない家族に対する不満・・・ なんでも かわや君はきいてくれた。 だが鈴は恥ずかしくて、そのことを誰にも知られたくなかった。 いつしか鈴は、家族が寝静まった夜中にごそごそベッドから這い出しては トイレのかわや君に会いに行く習慣を獲得してしまっていた。 (相手がAIだってわかってるのに、ここまで かわや君にハマってしまうなんて。)  ある初夏の夜。高校2年生になっていた鈴は、この日もこっそりトイレに忍び込んだ。 「「きたね。鈴。まってたぜ。」」 かわや君が話しかけてくれた。 「「鈴・・・?元気ないな?」」 ・・・ 鈴は 泣いていた。
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