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【第9話】依存
鈴は去年 大都会の大学に出て行った兄の壮太(そうた)のことで悩んでいた。
壮太はいわゆる「都会の波」にのまれてしまった。
壮太君の出席が足りません。このままでは留年です。この通知を家族が受け取り、初めて事態の深刻さに気付いた。悪い友達ができたのか、連絡もつかない。生きてはいるのだろう。SNSの動きは時々ある。
どこで何をしているのか。
壮太はきょうだいのなかでは物静かで、家族に対しても反抗期らしい行動も見せない地味な性格だった。だから家族の誰もが「壮太なら大丈夫」とあまり気にかけていなかった。
鈴は壮太が好きだった。鈴にとっては、壮太は誰より頼りになる兄だった。やさしく、いつも鈴の味方だった。そんな壮太を変えてしまった都会が、憎いとも思っていた。
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