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「ふう。これでよし。小さな支配人様がゲストを連れて来るまで後少しね。カメラも準備よし、お茶菓子もよし」
写真館には、ヒヨリが祖父の代から受け継がれて来た思い出が沢山飾られていた。白黒の写真もあれば、カラーでもぼやけたもの、デジタルによって鮮明になったものなど。
風景やら人物やらが散りばめられていて、ヒヨリにとっては宝石の様に光輝く宝箱そのものだった。
一息つきながら写真を見ていると、ヒヨリの目は、ある一枚に焦点を合わせていた。
「高校の卒業式の後にここで撮った写真だ」
その年、ヒヨリの祖父は亡くなった。その写真を撮ったのは、畑違いの道に進んでいたヒヨリの父だった。
「どうやれば斜めに撮れるんだか」
ヒヨリは笑った。
写真の中には、制服に身を包んだ四名の若者がいた。その写真の中の四人は、眩いくらいの笑顔で、視線は少し斜め下を向いていた。
ヒヨリが物思いに耽っていると、忙しない訪問があった。
「ヒヨリちゃん! もう来るよ!」
「わかった。ヨウタは花吹雪の準備ね」
「了解!」
中学校からの同級生のヨウタは、何かとヒヨリを心配して会いに来てくれていた。だが、お互いに恋愛感情は芽生えることもなく、友情を育んでいた。
「あ、来た!」
「ヨウタ、ドア開けるから花吹雪、盛大に頼むよ!」
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