2人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
「誰にも触らせない様に、普段は泥んこの石っころに擬態しておいてね。あ、豚饅頭は美味しく食べられちゃうから駄目」
「豚饅頭だったり、泥んこの石だったり。最早私は人ではないのか」
「嗚呼もうさ、本当にどうしよう。ハナコが足りない」
「そう言われても」
「好き。全部好き」
「まだお互いに知らないことが沢山あるよ」
「これから知っても好きにしかならないからいいんだよ」
タロウは深呼吸をした。視線が交わる。
「好きだ。ハナコが大好きなんだ!」
さっきまでの苦しさが、嘘の様に溶けていく。
「タト君。大好き」
胸ポケットには、あのキーホルダーが入ったまま。
離れていた時間を埋める様に、二人の唇は繋がった。
「本当に私の容姿気にならない?」
「何を今更」
「だって」
「俺だけが知っていればいいよ。ハナコの良いところ全部」
タロウはくしゃっと笑った。石の様に燻っていた心が、宝石の様に輝き出した。
「もう離さない」
縁は結ばれた。
「柔道で強くなって守るからね!」
「本当に強くなりそうだなあ。かかあ天下も悪くない、か。そうだ。帰りに豚饅頭買って食べようか」
「私、美味しいところ知ってるよ」
初めて出来た友達との、宝物の記憶。そして、その友達が最初で最後の恋の相手となる。
「ハナコ、手」
「うん」
最初のコメントを投稿しよう!