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番外編 あなたと私
その日、狭山写真館は、ある一組の家族が貸し切り予約となっていた。
「嗚呼もう。あいつらだけ幸せ満喫とか信じらんない! 嗚呼、もう馬鹿夫婦め!」
誰もいない写真館で、一人黙々と作業をしていたのは狭山ヒヨリ、二十九才、女性、独身。
「もう、腕が上がらない! 誰よ、こんな子供じみたパーティーの飾り付けを考えたのは!」
答える者は誰もいない。
「ええ、そうですよ! 私が提案したんですよーっだ!」
カラフルな印刷物を白い壁に貼り付けながら、ヒヨリは大きな瞳を更に大きくして言った。
「別に、償いとかじゃないんだから! 頼まれて仕方なく、よ!」
大人が書いたようには見えない、絵の数々。それを手に取ったヒヨリは、思わず微笑んだ。
「あちゃー。絵の才能は父親譲りかあ」
人間なのか、はたまた宇宙人なのか。愛らしい人型の絵や乗り物の絵。
「色彩センスは母親譲りってところかしらね」
ヒヨリは溜め息を吐いた。
「うん、よし! もう猫は被らない! やってやるぞー!」
大きな白いキャンバスが、支持された通りに色付いていく。今日だけは、この写真館の主はヒヨリではないのだ。
白いキャンバスをカーテンで隠した。
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