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夜まで勉強をし、逃げるように学校に行く。
学校についてからも一人なので、仲の良い生徒たちが話しながら歩いているところを、スタスタとよけるように歩く。
階段を上っていこうとすると、見慣れた顔を見つけた。
「雄二くんー?」
同じ地域に住んでいるのだろうが、同じ学校だったことに驚きを隠せないまま
声を掛けてみた。
くるりと振り返って私の顔を確認すると、人好きするような笑顔に変わった。
「ゆきちゃん、おはよう」
「おはよう、ここの学校の生徒だったんだ」
「知らなかったの?ひどくない?」
ちょっと残念そうな顔を浮かべている。
「ごーめんってば、学年1個下なら階も違うでしょ?
見てこなかったんだよ」
少しだけ可哀そうに見えたので、弁明をしてみた。
実際、見た記憶もないのだが、なぜだか会ったことのあるような感覚がするのだ。
なので本当に自分が忘れているだけなような気がして、申し訳ない気持ちになる。
「まあいいけど、それなら忘れないように一緒にお昼食べようよ」
「・・・え?」
思わぬ申し出に一瞬固まってしまった。
実はあんまりへこんでなかったのだな、という思いと
答えをどうしようか悩んでいると、こちらの顔を覗き込んで
「俺と食べるのいや?」
またあの残念そうな顔を浮かべた。
「ううん、そんなことはない」
思わず即答すると
「じゃあ決まりね、お昼休み向かいにいくわ、教室どこ?」
「3-B・・・」
「O-K-!またね」
といって、去っていった。
イケメンは残念そうに顔を歪ませてもイケメンだった。
あの顔にしてやられた。
彼の背中を見送りながら、私は謎の敗北感に包まれた。
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