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「雨宿りですか」と、声をかけてきた。
私は、ヤバイ顔に見とれていたのがばれたのか、という思いと
死神がしゃべったという思いがあって
「ええ、まあ、うん」と容量を得ない答えをしてしまった。
間の悪さを感じた私は、
「こういう微妙な雨だと走って帰るか、雨宿りするか、悩みますね」と続けてみた。
すると男は思ってもみないことを口にした。
「いや、そんなことないでしょ、いつも雨宿りしてるの俺知ってるよ」
驚いて、またぐるっと男に顔を向けてしまった。男は終始ニコニコしている。
どうしてこの男は私のことを知っているのだろうか、私はこの男に会った記憶がない。
いや、まてよ、この男そもそも学校にいただろうか。
男は私の言葉を挟む隙を与えずに続けた
「どうしていつもここで雨宿りしているの?」
私は答えるのに少し悩んだが、ややあって口を開く
「雨が振っているとさ、バスが遅れて帰るのが遅くなったって言い訳できるでしょ」
男がにやりとしながら「帰りたくないんだ」といった
聡いなあと思いつつ「そうだね」とぽつりと答えた。
すると「なんで」と聞かれたものだから、正直に答えるか迷ったが、
「今さ、両親が離婚の話し合い中でね、空気が重いから居合わせたくないんだよ、よくある話でしょ」
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