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次の日、私はバス停の先にあるお寺に来ていた。
家に居場所がなかった私は、外で一人になれる場所を探していたのだが、この閑散としたお寺は絶好のスポットだった。
いかんせん、誰も来ない。静かな自然に囲まれたお寺は私の癒しである。
敷地に入っていくと、坊主に袈裟といったいかにもな住職の姿があった。
「おお、ゆきちゃん、ひさしぶり元気にしてた?」
たれ目の人の好さそうな顔がこっちを向いた。ゆきとはもちろん私の名前である。
「ひさしぶりって言っても、2週間ぶりじゃん」
まったくこれだから年寄りはすぐに久しぶりという。そんなに頻繁にお寺に来る人なんてそうそういないだろうに。
「そんなこと言ったって、小さい頃はよくここにきていたもんだよ、じゅうしょくさまーってね、かわいかったもんだよ」
本当にこれだから年寄りは。
「いつの話だよ」
散々してきた流れなので軽く流しつつ、向こうも気にしていないのか続けざまに口を開いた。
「学校で友達ができたのかい?」
いきなり痛い子ことを聞かれて、ムッと顔をしかめながら答えた。
「別に、出来てないよ」
面白くもない話題なので、これ以上話題が広がらないよう簡潔に言った。
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