雨とバス停

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私がお寺に来なくなったのは、友達ができたからだとでも思ったのだろうか。 もともと不仲だった親は、あまり学校行事などに顔を出さなかったものだから、家庭の事情について、様々なうわさが飛び交い私はよくクラスから浮いていた。 親は、子供に興味がない人だったので、私も人との距離感をつかめないままここまで来たのだ。 そんなことを気にするあたり、この住職様は、親よりも親だった。 そういえばと、昨日の黒い男のことを思い出した。けどまあ、友達とも呼べないしいちいち報告することでもないような気がした。 「ゆきちゃんは、かわいくないなあ」 昔の私は可愛いかったが、今の私は可愛くないらしい。失礼な。 そして、むくれっつらをしている住職様のほうがよっぽど可愛らしい。 「あ、そうだ、友達出来るよう、お参りしていく?」 「結構です」 即答した。 「えー残念」 この人は、私に信仰を強要しない。こんな私の面倒も見るので本当に変わった人だとつくづく思った。 そしてそれ以上に肝が冷えた。実は前回の2週間前に来た時に、 本当に「友達ができますように」とふと思い立って願掛けをしたのである。 けれど実際そんなこと、言えるはずもない。 これは墓場まで持っていく秘密かな、と神社の横にある霊園のお墓を一瞥しながら そんなことを思った。
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