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普通そんなこと聞くか?とおもいつつ、この男は黙ってたら綺麗なのに、あれだ、
残念なイケメンという奴なのだろう。
「うーん、合格祈願?」適当にはぐらかした。
「なんで疑問形なんだよ、受験生?」
「そうだよ、中3」
「げ、俺一個下じゃん、敬語使わなきゃダメ?」
「もういいよ」
ちょっと笑ってしまった。最初のちょっと神秘的な印象からずいぶん変わってきた。
打ち解けたのだろうか。
「私、ゆきっていうの、名前は?」
「俺?俺は雄二(ゆうじ)」
どこかで聞いたような名前だなと思いつつ、よくある名前だからと思い直した。
「いきなり下の名前では呼びにくいな、苗字教えてよ」
そういうと、雄二はちょっと困った顔をして言った
「いいじゃん、雄二って呼んでよ」
なんとも、チャラ男が言いそうなセリフである。
すると、男ははっとした顔をすると、
「俺用事を思い出したから!またね!」
といって、走り出した。
あっけにとられていると、
「ゆきちゃーん」と声が聞こえてきた。住職である。
パタパタとやってくる様子を見つつ、「こんにちは」とお決まりのセリフで切り出してみた。
「おう、それよりさ、いま人がいなかった?」
「え、ああ、知り合いが一人、いましたけど」
聞くなやいなや、「ふーん」といって、雄二がいた方向を目を細めて見据えつつ
私のほうに向き直って、何か言いおうと口を開いたが、思い直したように口を閉じた。
なんだろう、すごく気になる。
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